少子高齢化が進む日本の地方都市や地域では、人口減少や経済の停滞が深刻な課題となっています。かつては賑わいを見せていた商店街や観光地も、訪問者の減少により活気を失い、地域の魅力が十分に発揮されないケースが増えています。こうした状況を改善するために注目されているのが地域活性化です。
各自治体や企業が地域活性化に取り組んでいますが、「何を優先すべきか」といった具体的な手法で悩む実例が多く見られます。本記事では、地域活性化の背景や成功事例を紹介し、特に観光を軸としたプロモーション戦略が地域経済の再生にどのように役立つかを解説します。
地域活性化なぜ必要？日本社会の現状からわかる３つの理由
日本の地方都市や地域は、少子高齢化や人口減少という大きな課題に直面しています。このまま対策を講じなければ、地域そのものが消滅する恐れが懸念されます。本章では、日本社会が抱えている問題と、その影響について3つのポイントに分けて解説します。
① 国内の人口減少と高齢化
▲総務省統計局 人口推計（2025年1月20日公表）
日本は急速に少子高齢化が進んでおり、2024年8月時点の日本の総人口は1億2,388万7千人で、前年同月比で約55万人減少しています。特に65歳以上の人口は全体の29.3%に達する一方、15歳未満の人口は僅か11.2%です。この現象は都市部よりも地方部で顕著であり、若者が流出し、高齢化が加速している状況です。人口減少のスピードが早い地域ほど、将来的な存続が危ぶまれています。
② 首都圏への人口一極集中
▲総務省 令和６年版国土交通白書（第I部・第1章・第1節 28ページ）
総務省の「都道府県別人口増減率」のデータから見ると、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県では、2015年から2020年の間に人口の転入超過が続いています。一方で、秋田県や岩手県などの地方都市は転出超過となり、人口流出が加速しています。各市町村の人口縮小が進んでおり、地域の社会や経済に大きな影響を及ぼしているのです。
③ 人口減少社会による懸念
人口減少は地域経済や社会生活のあらゆる面に影響を与えます。人の暮らしを支える生活サービスの提供機能が低下し、最終的には喪失の懸念もあります。具体的な影響は下記の3つが挙げられます。
- 地元経済の縮小：商店街や観光業が衰退し、地元産業や商売が成り立たなくなる
- 公共サービスの減少：一定の人口規模を持たない地域では、医療施設や交通インフラの維持が困難になり、住民の生活基盤が脆弱化する
- コミュニティの崩壊：地域住民のネットワークが疎遠し、後継者不足により地域行事や伝統文化が途絶える恐れがある
このような状況を放置すれば、地域の存続が危機に晒されます。日本創生会議が公表した推計では、2040年までに約896の自治体が消滅の可能性にあるとされています。
■なぜ地域活性化が必要なのか？
日本社会の暗い未来を変えるための解決策の一つは、地域活性化です。
地域活性化とは、地方自治体や地域の住民が連携して、地域の魅力を発信して経済の再生や人口の維持・増加を目指す取り組みのことです。最近では、各地域が独自の観光資源や産業を活かし、国内の若者や外国人観光客の誘致など、多様なアプローチが行われています。
地域の個性を活かした取り組みは、地方部の人口減少を抑え、持続可能な社会を築くために不可欠です。また、観光資源の再発見や外国人観光客の誘致を取り入れた施策は、地方経済の活性化にも直結します。
次の章では、地域活性化を成功させる具体的な取り組みと事例を詳しく紹介していきます。
日本全国での地域活性化の取り組み
地方自治体は地域の課題を解決し、持続可能な発展を目指してさまざまな取り組みを行っています。ここでは代表的な5つの地域活性化施策と具体的な取り組みの一例を説明します。
■地域活性化の5つの取り組み
➤産業振興
地元の農業・漁業や伝統工芸などの地域産業を支援し、知的・人的リソースを持っている地方大学との連携を通じて新たなビジネス創出を促進します。これにより、地域経済の発展と雇用機会の拡大を図っています。
➤関係人口の創出
移住・定住の支援や起業の促進、雇用創出を通じて地域人口の増加を目指しています。移住者への相談窓口の設置や地域イベントの開催を通じて、地域とのつながりを深め、転入者をサポートしています。
➤教育の整備
子育てしやすい環境を整備し、若い世代の移住を促進します。また、地域への愛着を育む教育プログラムを実施し、次世代の担い手を育成する取り組みも行われています。
➤まちづくり
公共空間の改善や地域インフラの整備、コミュニティの強化を通じて、住みやすく魅力的な街を目指しています。住民にとって安全で快適な暮らしを実現し、地域のブランド力を高めます。
➤観光の活性化
地域資源を発掘・活用し、観光振興や都市部との交流の促進で、地域の魅力を発信します。また、国内外からの観光客を増加させ、地元経済を支えるファンやリピーターの獲得を目指しています。
具体事例：地域おこし協力隊で得られる効果
地域おこし協力隊は、総務省が主導する地方活性化支援の一環であり、地域振興を担う重要な取り組みです。都市部から地方に移住した隊員が、地域の課題解決に向けた活動を行い、地域振興をサポートします。通常任期は1～3年で、農業支援、観光振興、特産品開発、地域イベントの企画運営など多岐にわたる分野で活躍されます。
地域外から新しい視点が加わることで、これまで気づかなかった地域資源の魅力が再発見されることが多くあります。岡山県真庭市や新潟県十日町市などでは、協力隊員が任期終了後地域に定住し、活動を継続する例も増えています。これにより、移住・定住の促進や少子高齢化対策としても高い効果が期待されています。
令和5年度には全国で7,200名の隊員が活躍しており、その中には外国人の姿も見られます。また、隊員の約7割が20～30代と若年層が中心であり、任期終了後に約65%が同じ地域に定住しています。
若い世代の才能と新しい視点を地域に取り込む地域おこし協力隊は、地方に活気を与える重要なサポートと言えるでしょうか。
成功につながる地域活性化施策に必要なステップ
地域活性化を成功させる鍵は、地域の特徴を深く理解し、ターゲット層に合わせた適切な施策を実行することです。ここでは、効果的な地域活性化施策を進めるための4つのステップを紹介します。
■ステップ1：地域資源の魅力を発掘する
日本各地には、まだ発掘されていない多くの魅力的な資源があります。自然景観や歴史的建造物、伝統文化だけでなく、地元の食材や特産品、人材も重要な地域資源です。地元の人にとっては当たり前と感じるものでも、移住者や外国人観光客にとっては新鮮で魅力的な発見になることがよくあります。こうしたリソースを見つけ出し、適切に活用することで、その地域ならではの独自性をアピールできます。外部の視点を取り入れることで、意外な資源が見つかることもあるでしょう。
■ステップ2：ターゲット層の明確化
施策を行う際には、ターゲット層を明確に設定することが不可欠です。地域ごとの課題や目標に応じて、国内外の観光客、移住希望者、地域住民などを細かく分類し、それぞれのニーズを把握した上で、共感を呼ぶ情報発信を行うことで効果が高まります。例えば、外国人観光客の誘致を行いたい場合、過去に訪問した旅客の国籍データを分析し、どの国の観光客が多いのかを確認し、ターゲットの設定が重要です。データに基づくマーケティングは、ピンポイントで効果的なプロモーションが期待されます。
■ステップ3：ターゲットの嗜好に応じた情報発信
地域活性化には、マーケティングの戦略を視野に入れることが大切です。例えば、情報発信の方法はターゲットに応じて変えるのがポイントです。若い世代にはSNSや動画コンテンツを活用した情報発信が有効であり、子育て家庭やシニア層には自治体の広報紙や地域イベントを利用した直接的なアプローチが効果的です。さらに、発信する際はわかりやすいコンテンツや、共感を呼ぶストーリーを取り入れると、より多くの人に地域の魅力を届けます。
■ステップ4：効果測定とフィードバックによる継続的な改善
施策は一度行えば終わりではなく、継続的な改善が極めて重要です。実施後の結果を測定し、内容をブラッシュアップできれば、より効果的な取り組みに進化します。事後のアンケート調査やSNSでの反応を分析し、地域住民や観光客のフィードバックを積極的に取り入れることで、長期的に持続可能な地域活性化施策を実現できます。
プロモーションに向けた地域活性化事例5選
地域活性化の成功には、産業振興や移住促進など多角的なアプローチが求められますが、中でも観光分野のプロモーションは地域の知名度向上と経済活性化に繋がる重要な施策です。特に、SNSやインフルエンサーを活用したマーケティングは、効果的な情報拡散とターゲット層への訴求力を高める手段として注目されています。
この章では、実際に観光プロモーションを活用した地域活性化の5つの成功事例を紹介します。
■事例１【山口県】SNSの拡散力を発揮したキャンペーン
山口県は地域の魅力を全国に発信するために、SNSを活用したユニークなキャンペーンを実施しました。
- 「#山口つながり応援」のハッシュタグ投稿キャンペーン
- 1クリック=1円（上限30万円）の寄付キャンペーン
山口つながり応援「地方創生WEB集客キャンペーン」により、日本国内のインフルエンサーや全国のSNSユーザーが山口県を訪れ、リアルタイムで体験を発信しました。その結果、 SNS投稿数1,412件、応援数3,000,522 という大きな成果が出ました。
特にInstagramやTwitterでのシェアは若い世代に響きやすく、SNSの拡散力を実感できる成功事例です。他の地域でも応用可能な非常に魅力的な施策です。
■事例2【福島県】ターゲット国の嗜好を意識したプロモーション
震災後の福島県は、台湾、タイ、ベトナム、オーストラリアをターゲットとしたデジタルマーケティングを展開しました。
着目点としては、ターゲット国の嗜好をリサーチした上で、海外のクリエイターを起用し、「ヒストリー」「アウトドア」「ヘルス」「ネイチャー」を4つのテーマとし、現地の視点から福島の魅力を発信したことです。
現地の視点を取り入れることにより、各国の観光客に響くコンテンツを広告配信し、観光地への信頼感が向上しました。最終的には、動画が広く拡散され、ターゲット国の観光客誘致にも成功しました。
地域の魅力を海外へプロモーションする際は、ターゲット国のニーズを把握し、 現地のクリエイターと連携することで費用対効果が高まります。ターゲットに最適な視点とアプローチを活用し、より効果的なプロモーションが実現可能です。
▶ 福島県デジタルマーケティング
■事例3【青森県】適任したインフルエンサーを起用する
青森県では、直行便がある台湾市場をターゲットにし、台湾人観光客に地元の深い文化体験を宣伝することを目指しています。今回は、一般のグルメ・旅行系インフルエンサーと異なる視点を持つ台湾人インフルエンサーを起用しました。
フォロワー31万人のYouTuber工頭堅は、青森八戸市・三戸郡の歴史と文化を深掘りし、文化視点から青森県の観光地を紹介しました。1ヶ月で動画の再生数が4.2万回に達します。
▶ YouTubeチャンネル：工頭堅。旅行長
フォロワー16.6万人のBen桑は、ツアーの日程紹介以外の角度から、日本酒の文化、南部手踊りの継承と体験、南部の歴史にフォーカスし、リアルの感想をフォロワーに発信しました。動画が公開されてから視聴率が2.6万回に達します。
▶ YouTubeチャンネル：Ben桑日本漫談
地域の魅力と特徴を意識し、異なる視点のインフルエンサーを組み合わせることで、多様な台湾人観光客の関心を引き付けることに成功しました。
■事例4【岡山県】ポストコロナを見据えた招待施策
岡山県観光課は、2022年11月のポストコロナで訪日インバウンド市場の再開を見越し、海外プロモーションを実施して、台湾からのインフルエンサーを招待しました。
招待された2名の台湾人インフルエンサーは、岡山での体験をYouTubeとFacebookで発信し、台湾の視聴者に岡山県の魅力を直接伝えました。当時、岡山桃太郎空港と台北の直行便はコロナの影響で運休中でしたが、企画を実施した４ヶ月後の2023年3月に復航し、集客効果が見られました。
▶ Facebook：日本。私旅行
▶YouTubeチャンネル：工程師Eva X rd.dayoff
■事例5【群馬県】低予算でも可能な集客施策
群馬県のみなかみ町では、低予算で台湾人観光客をターゲットにした集客施策を実施しました。他の有名な観光地と異なった手段で、当初は台湾・台南市との交流を促進し、現地の小規模の旅行社との協力を通じて、企画ツアーを販売しました。小規模からこそできる即断即決で、大きな成果につながっています。
一方で、例えば低予算でも、地域内の企業と協力し、宿泊施設やレストランが無料でサービスを提供することによって、台湾人インフルエンサーがその体験をSNSで拡散するというPR企画もあります。
施策の結果により、2019年には年間1万人以上の台湾人観光客がみなかみ町を訪問したという成果を上げました。
▶ 群馬県みなかみ町事例
まとめ
これらの事例から分かるように、地域活性化を成功させるには、地域資源の発掘とターゲット層に適した情報発信が不可欠です。特にSNSやインフルエンサーを活用した効果的なプロモーションは、国内外の観光客を惹きつける大きなキーとなります。
Allez（アレイ）は、台湾市場向けのインバウンドマーケティングに豊富なノウハウを持ち、業者のニーズに応じて、最適な台湾人インフルエンサーの人選からSNSプロモーションまでを一貫してサポートします。地域資源の魅力を最大限に引き出し、台湾人観光客を呼び込む最適な戦略を提案します。
現在実施中のクラウドファンディングプランは、低予算でもグローバルマーケティングを実現可能というコスパのよいPR施策です。Allezの専門チームは、地域資源を複数組み合わせ、台湾現地のインフルエンサーやSNSを活用した効果的なプロモーションを提案し、費用対効果の高いマーケティング戦略を策定し、具体的なPR施策を提供します。
興味のある方は、ぜひAllezのホームページをご覧いただき、ご相談ください。
